恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「正樹さんは昔から口下手で説明が足りないんだ。本当は今日、和香さんに会えるのを誰よりも楽しみにしていたんですよ」

 隣で帆高が楽しそうにフォローを入れると、正樹は気まずそうに「余計なことを言うな」と短く返し、お茶に口をつける。
 帆高の両親は和香の親と違い、血のつながりがないのに、帆高を尊重している。
 和香がいいと思ったのではなく、帆高が和香を選んだから正樹もそれを尊重しているのだ。

その時、応接室の扉がふたたび柔らかく開き、パッと華やかな空気が部屋の中に広がった。

「もう、正樹さんたら。そんな固い顔をしてたら和香さんが怖がってしまうでしょう?」

 あたたかな笑顔で入ってきたのは、正樹さんの妻である紗枝だった。
上品な着物を綺麗に着こなし、醸し出す雰囲気は優しさと気品に満ちあふれている。

「和香さん、ようこそいらっしゃいました。お会いできるのを、私もずっと楽しみにしていたのよ」
「本日はお招きいただきありがとうございます!」

 和香が慌てて立ち上がり深々と頭を下げる。すると紗枝さんは「まぁまぁ、そんなに身構えないでね」と柔らかく目を細め、和香の隣へと腰掛けた。

「帆高から話はたくさん聞いていたけれど…本当に可愛らしくてステキな人ね。あの子、会社でも家でも昔からクールで自分の感情を表に出さない子だったのに、和香さんの話をする時だけは目尻が下がりっぱなしなのよ」
「紗枝さん、余計なことは言わなくていいです」
少し照れたように制する帆高を見て、紗枝さんは「ほらね?」と悪戯っぽく微笑んだ。
 口数は少ないけれど温かい眼差しで見守る正樹さんと、明るく包み込むような優しさで緊張を解きほぐしてくれる紗枝さん。

(……すごく、あたたかいお父さんとお母さんだな……)

 自分の実家では一度も感じたことのなかった家族のぬくもりが胸いっぱいに広がり、和香の緊張はいつの間にかすうっと溶けていっていた。


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