恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 一杯だけカクテルを飲むと、その後、薄暗い照明が印象的なバーの奥へと案内された。二人は扉で仕切られた完全個室のソファー席に通された。

「……菜子さん、私、やっぱりもう帰ります」

和香が毅然とした態度で立ち上がろうとした、その瞬間…―

「うっ……ううう、おねがい、和香さん……一時間でいいから!一時間だけでいいから話を聞いて……っ」

 菜子は突然顔を覆い、子供のように声を上げてぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。
 あまりの取り乱しように、和香は思わず足を止めてしまう。周りに他のお客様がいない個室とはいえ、ここまで泣かれては強引に振り切って出ていくことも難しかった。

「……わかりました。一時間だけですよ。それを過ぎたら、理由がどうあれ失礼します」

 和香がため息まじりにそう告げると、菜子はすぐさま涙を拭い、メニューを開いて注文を済ませた。
 運ばれてきたのは、色鮮やかなカクテル。
一口口に含んだ瞬間、和香は強いアルコールの匂いに喉が焼きつくような感覚を覚えた。
 思わずグラスを置く和香をよそに、菜子は度数の高いお酒を平然とした顔で次々と喉へ流し込んでいく。これだけの量を飲んでいるというのに、顔色ひとつ変えず、酔う素振りすらまったく見せない。

(この人……全然酔ってない……?)

 その違和感に気づき、和香の背筋に冷や冷やとした嫌な汗が伝う。

「あ、ごめんなさい。私、ちょっとお手洗いに行ってきますね」

 菜子はそう言うと、バッグを持ってすっと立ち上がり、個室のドアを外から静かに閉めて出て行った。
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