恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 一人取り残された和香は、手元の時計に目を落とす。すでに三十分以上が経過していた。早くこの時間が終わってほしいと祈るような気持ちで、そわそわとドアの方を見つめていると…―カチャリと静かに鍵が解除される音がした。

「菜子さん、遅かっ…―」

 声をかけかけた和香の言葉が、途中で凍りついた。
扉を開けて入ってきたのは、菜子ではなかった。

 見覚えのない高級スーツを着た見知らぬ男性が、笑みを浮かべながらゆったりとした足取りで室内へと入ってきた。

「やあ、君が今日“遊ぶ”相手が欲しい子かな?菜子ちゃんから話は聞いているよ」

 男性は和香の警戒をあざ笑うかのように、そのまま個室の扉をパタンと閉め、内側から鍵をロックした。

「……っ、なに……を……」

 突如襲ってきた猛烈な目眩に、和香は倒れそうになる身体を必死に支えようとした。だが、指先一つすら思うように動かない。視界がグニャリと歪み、全身から急速に力が抜けていく。

(……お酒……?もしかして、薬?)

 逃げ出そうと伸ばした和香の細い手首を、男が嘲笑いながら掴み上げ、ソファーの上へと強引に組み敷いてくる。
 身体が鉛のように重く、抗う声すらまともに出ない絶望の中、カチャリとドアの鍵が開き、菜子が部屋へと戻ってきた。

 スマートフォンのシャッター音が、静かな室内に無機質に響く。

「……あ、すごくいい写真が撮れた」

 満足そうに画面を確認した菜子は、和香の元へ歩み寄ると、天使のように可憐で純粋な笑顔を浮かべて覗き込んできた。
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