恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「はじめまして、ではないのだけれど……まあ、覚えてはいないと思うから、もう一度挨拶をするよ。私は、久東正樹という。今日は君を引き取りたいと思い、親族間の話し合いに参加させてもらうことにしたんだ」
帆高は、言葉もなく静かに頷いた。
誰に引き取られようと、自分にとって大した違いはない。どうせ大人の都合で振り回されるだけだ…そんな冷めた意味を込めた首肯だった。
しかし、目の前の端正な顔立ちをした男は、帆高の諦めを見透かしたようにふっと小さく笑った。
「包み隠さずに理由を話そう。できれば、君には将来、私の会社を継いでもらいたい。その跡継ぎを育てるという目的で、君を引き取りたいと言いに来た」
眉一つ動かさず、大人のビジネスのような言葉を投げてくる。だが、男は一拍置くと、少しだけ眼光を和らげて続けた。
「……だが、そうだね。私には子どもがいない。妻とは色々とあって、子どもに恵まれなかったんだよ。だから少しでもいいから、子どもがいる生活というものを味わってみたかった。それも紛れもない事実だ」
正樹は、逃げも隠しもせず、自分のエゴも欲望もすべて開示してみせた。
子どもを子ども扱いせず、一人の人間として対等に条件を提示してくる姿勢に、帆高は「この人は正直な大人だ」と感じた。
「……どうかな。君は、どうしたい?」
親戚の誰もがしてくれなかった問いかけ。自分の意思を尋ねる言葉。
帆高は、小さな唇を開いた。
「……わかった。いいよ」
「ふ……話が早くて助かる。利害の一致だ」
そう言って差し出された大人の大きな手を、帆高は自分の小さな手でしっかりと握り返した。
その手はとてもあたたかくて、なんだか目尻が滲んできた。
葬式ですら涙を流さなかったのに。
そうして帆高は、久東家の一員…―、東和商事の社長の息子として新たな人生を歩み始めることになったのだ。
帆高は、言葉もなく静かに頷いた。
誰に引き取られようと、自分にとって大した違いはない。どうせ大人の都合で振り回されるだけだ…そんな冷めた意味を込めた首肯だった。
しかし、目の前の端正な顔立ちをした男は、帆高の諦めを見透かしたようにふっと小さく笑った。
「包み隠さずに理由を話そう。できれば、君には将来、私の会社を継いでもらいたい。その跡継ぎを育てるという目的で、君を引き取りたいと言いに来た」
眉一つ動かさず、大人のビジネスのような言葉を投げてくる。だが、男は一拍置くと、少しだけ眼光を和らげて続けた。
「……だが、そうだね。私には子どもがいない。妻とは色々とあって、子どもに恵まれなかったんだよ。だから少しでもいいから、子どもがいる生活というものを味わってみたかった。それも紛れもない事実だ」
正樹は、逃げも隠しもせず、自分のエゴも欲望もすべて開示してみせた。
子どもを子ども扱いせず、一人の人間として対等に条件を提示してくる姿勢に、帆高は「この人は正直な大人だ」と感じた。
「……どうかな。君は、どうしたい?」
親戚の誰もがしてくれなかった問いかけ。自分の意思を尋ねる言葉。
帆高は、小さな唇を開いた。
「……わかった。いいよ」
「ふ……話が早くて助かる。利害の一致だ」
そう言って差し出された大人の大きな手を、帆高は自分の小さな手でしっかりと握り返した。
その手はとてもあたたかくて、なんだか目尻が滲んできた。
葬式ですら涙を流さなかったのに。
そうして帆高は、久東家の一員…―、東和商事の社長の息子として新たな人生を歩み始めることになったのだ。