恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 久東家へ引き取られてからの人生は、あらゆる面で過酷かつ完璧だった。
全寮制の中高一貫校から難関大学へと進み、常に学年トップの成績を維持し続けた。正樹が提供してくれた最高の環境に報いるためであり、何より自分自身が“久東正樹の息子”として恥じない人間でありたかったからだ。
 大学卒業を約一年先に控えたある日、帆高は正樹の書斎を訪れ、ひとつの提案をした。

「正樹さん。俺の素性を完全に伏せた状態で、現場に入らせてください」

デスクの書類から目を上げた正樹は、面白そうに眉をひそめた。

「理由を聞こう」
「突然やってきた“会長の息子”が幹部候補として居座れば、現場の社員に不要な反発や不信感を生みます。実力がないと不満は絶対に起きるでしょう。無用な軋轢は組織のパフォーマンスを落とします。だから、まずは俺が『何者でもない一社員』として現場に入りたいんです」

 帆高が提示したロードマップは明確だった。
最初の数ヶ月は、清掃業務からスタートする。
その後、アメリカのグループ子会社へ渡り、2年間かけて実戦での経営ノウハウとマネジメントを叩き込む。帰国後は正体を隠したまま一社員として本社へ配属され、5年目までにマネジメント試験をクリアする。周囲から「あいつが上に立つのは当然だ」と実力を認められたタイミングで、初めて後継者として表舞台に立つ。
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