恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 本社へ復帰し、晴れて和香と同じ部署で働けるようになったものの、現実は甘くなかった。
 和香は常に、帆高との間に“頼れる先輩”と“後輩”という明確で厚い線を引いていたからだ。
 どれだけ彼女にだけ特別な笑顔を向けても、どれだけ彼女だけに熱を込めた視線を送っても、和香は全く気づいてくれない。
 社内恋愛など微塵も意識しておらず、むしろ仕事に差し支えないよう意識的に恋愛感情を排除しているようすら見えた。

『おはようございます、水瀬さん』
『あ、おはよう、久東くん!そうだ、昨日の会議の議事録のことなんだけど……』

 たまにプライベートの話題を振ろうとしても、彼女の口から出てくるのはいつも仕事の話ばかり。
 どんなに近くにいても、彼女の心の奥へ踏み込む足がかりすら掴めないまま、帆高はどうアプローチすべきか一人焦り、考えあぐねていた。

…―そんな時、思わぬ転機が訪れる。

 あの日、偶然耳にしてしまった、和香と母の電話の会話。
親からの理不尽な圧力、そして望まない政略結婚…―。
 絶望に押し潰されそうになりながらも、一人で抗おうとする彼女の姿に、胸が張り裂けそうになった。

…―今、この瞬間しかないと思った。
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