恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】

 食事を終え、片付けも済ませた頃には、すっかり夜も更けていた。

「じゃあ、今日は本当に解散ね」
「ご飯を食べたら解散」という約束通り、和香は玄関で靴を履く帆高を見送ろうとした。
けれど、彼はドアノブに手を伸ばす代わりに、くるりと振り向いて和香の細い肩を引き寄せた。
「帆高くん……っ」
「約束ですから、今日は素直に帰ります。でも、名残惜しいですね」

 名残惜しそうに腕の力を強め、和香の首筋にそっと額を埋めてくる。
彼の熱い吐息と優しい香りが肌をくすぐり、和香の心臓は再び跳ね上がった。

「明日からまた、会社で待ってますから。公認の『恋人』として、よろしくお願いしますね」

 耳元で低く囁き、名残惜しさを断ち切るようにそっと身体を離すと、帆高は優しく目を細めて微笑んだ。
 ドアが開かれ、彼の背中が消えていく。
パタン、と重いドアが閉まり、静寂が戻った部屋で、和香は赤くなった顔を両手で覆った。

(会社で待ってるって……明日からどんな顔して会えばいいの…)

 胸の奥を占める甘い余韻と甘酸っぱい羞恥心。
しかし、その静寂を切り裂くように、テーブルの上のスマートフォンが甲高い通知音を響かせた。
 画面に表示されたのは、妹の海からのメッセージだった。
胸のざわつきを覚えながら画面をタップすると、そこには弾けた文字躍る緊急のLINEが届いていた。

『お姉ちゃん、ごめんね!私、彼と無事に逃げられたよ。お父さんとお母さんはまだ気づいてないと思うけど…本当に今までありがとう。今度また会おうね』

「海……っ」

 画面を見つめたまま、和香は息をのんだ。
妹が無事に駆け落ちを成功させ、親の支配から逃げ延びてくれたという絶大な安堵感にほっと胸を撫でおろす。

 それが胸に広がると同時に、すぐさま背筋を冷たい悪寒が駆け抜けた。
(海が逃げ切った……ということは……)
 実家と神楽坂の怒りの矛先が、すべて自分ひとりに向かうことを意味していた。
大丈夫だろうか…―。
帆高に何か圧力がないか、和香は心配で仕方がなかった。
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