恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「君のお父上からも伺っていますよ。少し反抗期が遅れて来ているようだとね。ですが和香さん、海さんがどこかへ逃げ去った今、君がこのお話から逃げられるとお思いですか?」
彼の口から妹の名が滑り出た瞬間、和香の身体が小さく強張った。
「妹のことは関係ありません。これは、私の意志です」
「いいえ、大いに関係がありますよ。水瀬家の存続も、君の今後の立場も……すべて君が私の妻になるかどうかにかかっている。君が賢い女性なら、私を敵に回すことがどれほど愚かなことか分かるはずだ。それに…君の妹がどこに行ったのか、私が知らないとでも?」
「…っ、随分、卑怯ですね」
「これは取引ですよ。こちらの手札を全て見せるわけにはいかない」
神楽坂の声音から、かすかに隠されていた冷酷な本性が滲み出てくる。
既に海の居場所まで突き止めているからこそのその余裕に、納得した。
彼にとって、この縁談は愛や情などではなく、ただの利害関係でありビジネスに過ぎないのだ。
そして自分は、その盤上の駒としてしか見られていない…―、その事実が、冷たい現実となって和香の胸を刺した。
(負けちゃダメ。ここで引き下がったら、私の人生も、帆高くんとの未来も……全部奪われてしまう)
和香は強く下唇を噛み締め、冷ややかな神楽坂の視線を真正面から見つめ返した。