想定外につき、対処不要
そこから撮影が始まり、以前とは違う場面に変わって、彼女の衣装には血糊が付けられていた。スタッフがセットの確認をしている中で、彼女は一瞬の隙を突き、俺のほうを見てきた。すると、軽く肩をすぼめて、直ぐに戻した。その仕草に、俺は少し首を傾けたが、彼女の言葉を思い出した。
おもむろに時計に視線を移し、時間を確認してから、再び視線を戻し、現場を見回した後で足を進めて行った。確か上の階に食堂があると思い、エレベーターの前で右側にある上階へ向かうボタンに触れようとした。すると、直ぐに気配が近づいてきて、朱色の爪の先が右側のボタンを押した。
「一緒に食べましょうよ。ランチ」と立花は明るく言って、ドアの上部にあるランプを見上げた。
そこで俺は下の階のボタンを押し、「私は外で済ませますので、お気になさらず」と言って、前を見据えた。
互いに黙ったまま、エレベーターのドアが開くと、立花は乗り込むこともなく、徐々にドアは閉まっていった。そこから上部のランプが一つずつ点き、指定の場所で止まってから、下に来る様子を示していた。
やがて目の前でドアが開くと、立花は乗り込みながら、「じゃあ、一緒に行きましょ」と言った。
直ぐに俺は乗り込まず、右側に足をずらして下の階のボタンを押し、ドアが閉まるのを見計らってから、口を開いた。
「申し訳ないのですが、社用を思い出したので、遠慮させて頂きます」
立花はこちらを見ていたが、ドアが閉まったところで、俺は右側のボタンを静かに押した。
特に話す事など無いし、昔話を思い出すほどでもない。立花が付いていた僅かな期間に、何を振り返れば良いのか、想像も出来なかった。しかし……と考えを巡らせ始めたところで、エレベーターのドアが開き、足を進めて乗り込んだ。
食堂がある階のボタンを押し、上部のランプに視線を上げ、おもむろにドアに映る自身の姿を見ていた。
スーツに変な皺は無い。ネクタイも曲がって無いし、髪型も乱れてない。顔色はどうだ?と目を凝らしていると、到着を知らせる音が鳴り、ドアが開くと共に、一抹の不安を覚えた。
だが、目の前には明るい食堂が広がり、カレーの匂いが微かに漂ってきた。そこで俺は朝の事を思い出し、足を進めて行った。
食堂の脇には小さなメニュー看板が置いてあり、お勧めの定食や今日のランチが書き記されていた。
少し肩の力を抜いてから、軽く息を吐き出し、お勧め定食の食券を購入して、窓口に差し出した。すると、トレーの上に直ぐに並べられ、窓口の婦人が笑顔を向けてきた。
そこから窓際の隅の席に腰を下ろし、右側に鞄を置いた。そして箸を手にして軽く合わせ、『いただきます』と頭の中で呟き、食事を口に運んだ。
おもむろに時計に視線を移し、時間を確認してから、再び視線を戻し、現場を見回した後で足を進めて行った。確か上の階に食堂があると思い、エレベーターの前で右側にある上階へ向かうボタンに触れようとした。すると、直ぐに気配が近づいてきて、朱色の爪の先が右側のボタンを押した。
「一緒に食べましょうよ。ランチ」と立花は明るく言って、ドアの上部にあるランプを見上げた。
そこで俺は下の階のボタンを押し、「私は外で済ませますので、お気になさらず」と言って、前を見据えた。
互いに黙ったまま、エレベーターのドアが開くと、立花は乗り込むこともなく、徐々にドアは閉まっていった。そこから上部のランプが一つずつ点き、指定の場所で止まってから、下に来る様子を示していた。
やがて目の前でドアが開くと、立花は乗り込みながら、「じゃあ、一緒に行きましょ」と言った。
直ぐに俺は乗り込まず、右側に足をずらして下の階のボタンを押し、ドアが閉まるのを見計らってから、口を開いた。
「申し訳ないのですが、社用を思い出したので、遠慮させて頂きます」
立花はこちらを見ていたが、ドアが閉まったところで、俺は右側のボタンを静かに押した。
特に話す事など無いし、昔話を思い出すほどでもない。立花が付いていた僅かな期間に、何を振り返れば良いのか、想像も出来なかった。しかし……と考えを巡らせ始めたところで、エレベーターのドアが開き、足を進めて乗り込んだ。
食堂がある階のボタンを押し、上部のランプに視線を上げ、おもむろにドアに映る自身の姿を見ていた。
スーツに変な皺は無い。ネクタイも曲がって無いし、髪型も乱れてない。顔色はどうだ?と目を凝らしていると、到着を知らせる音が鳴り、ドアが開くと共に、一抹の不安を覚えた。
だが、目の前には明るい食堂が広がり、カレーの匂いが微かに漂ってきた。そこで俺は朝の事を思い出し、足を進めて行った。
食堂の脇には小さなメニュー看板が置いてあり、お勧めの定食や今日のランチが書き記されていた。
少し肩の力を抜いてから、軽く息を吐き出し、お勧め定食の食券を購入して、窓口に差し出した。すると、トレーの上に直ぐに並べられ、窓口の婦人が笑顔を向けてきた。
そこから窓際の隅の席に腰を下ろし、右側に鞄を置いた。そして箸を手にして軽く合わせ、『いただきます』と頭の中で呟き、食事を口に運んだ。