奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。
重い扉が閉まり、残されたのは私と氷室君の2人だけ。
沈黙を破り、先に口を開いたのは、彼だった。
「いやぁ、怒るような言い方をしてゴメン。ビックリしたよね」
そう言った彼の瞳には、先ほど月島君へ向けらていた冷たさなんか、まったく残っていない。
いつもの誰にでも優しい、王子様の目。
その急激な温度変化が、私はかえって恐ろしかった。
「あ、私こそ、ゴメンナサイ。飲食禁止なのに……」
しかし、気まずさから小さくなる私の謝罪の言葉は、途中で遮られた。
「話は聞かせてもらったよ。彼は……、月島は君のことが好きなんだね、春野柚葉さん」
氷室君の口から、予想もしていなかった言葉が私の耳へと届けられた。
