担降りしたはずの推しが、隣に引っ越してきました~side story ~

大樹side(前編)

南川大樹は、苛立ちを抑えきれなかった。

Bright Directionがデビューしてから、ここまで順調に人気を伸ばしてきた。
アリーナツアーも成功させ、もうすぐドームツアーに手が届くところまできている。
そう思っていた矢先の出来事だった。


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大樹は、昔から何でもそれなりにできた。
子どもの頃は「かわいい」と言われ続け、中学三年生で一気に背が伸びると、今度は「かっこいい」と言われるようになった。

スポーツも勉強も、少しやればそれなりの結果が出た。

必死になって努力をした記憶なんて、ほとんどない。

高校三年生のとき。
みんなで進路について話していると、ふいに友人に言われた。

「大樹なら、アイドルとかできるんじゃない?」

なるほど。
確かに。

そう思って事務所に書類を送ったら、思った以上にあっさり話は進んだ。

そして、大樹は「Bright Direction」のメンバーになった。

リーダーの巧実は、事務所に所属してから、十年以上もデビューが決まらずにいた苦労人だ。
もう無理か、と諦めかけていたところで、ようやくデビューの夢を叶えた。

海斗は、ダンスが抜群に上手かった。
大きなコンテストで何度も結果を残していた。

そして、愁。

歌もダンスも、特別目立っていたわけではない。

正直、大樹には理解できなかった。

──なんで、こいつが選ばれたんだろう?

けれど、愛想はいい。
いつも笑顔で、誰に対しても、気さくに接していた。

そして、まあ、練習には誰よりも熱心に取り組んでいる。
そういうところが買われたのかもしれない。

大樹は、三人を横目に見ながら、ここでも、それなりにそつなくこなしていた。

 
アイドルになっても、人生イージーモード。
そう思っていたのに、愁の熱愛報道がスキャンダルになった。

──人気は、そこで大きく陰りをみせた。
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