担降りしたはずの推しが、隣に引っ越してきました~side story ~
大樹side(後編)
愁には何度も謝られた。
相手とも、結局別れたらしい。
でも、大樹はすぐには許せなかった。
──足を引っ張るなよ。
愁がグループを辞めようとしていると知っても、止めようとは思わなかった。
むしろ、
「三人で再出発すればいいじゃん」
そう思っていた。
けれど、巧実は違った。
「愁がしたことは、アイドルとして許されることじゃない。でも、人間だから、失敗することもあるし、間違った選択をすることもある」
巧実は、まっすぐに大樹を見た。
「それでも愁は、自分の失敗を背負って、もう一度、ファンに夢を与えられるようなアイドルになるって決めた。だったら、俺はもう一度チャンスをあげたい」
海斗も頷いた。
「俺も」
そして、巧実は続けた。
「それに、愁のことは、きっかけにすぎない。それを払拭するくらいの力が、俺らになかったってことでもあると思う」
その言葉が、大樹の胸に深く刺さった。
「一人ひとりが、やれるだけやって、力をつけて、Bright Directionとして、また認められるようにしないと」
しばらく黙っていた大樹に、巧実は笑って言った。
「お前もさ、器用に何でもそれなりにこなすけど……一回、必死になってみろよ」
「……俺が?」
「そう。これだけは負けないってものを、身につけてみろよ」
そう言われて、大樹は改めて、いや、初めて考えた。
スポーツはできる。
勉強もできる。
でも、それは全部「できる」だけだった。
これだけは負けないもの。
今の自分には、何かあるだろうか?
しばらくして、大樹は特番のクイズ番組に出させてもらう機会があった。
結果は三位。
芸人の佐竹さんが、五連覇を果たした。
収録後、楽屋で荷物をまとめていると、佐竹さんが訪ねて来てくれた。
「大樹くん、すごかったね。負けるかと思ったよ」
「いえ、佐竹さんこそ。五連覇なんてすごいですね」
「いやー、ほっとしたよ。僕は、お笑いとしてはパッとしないからさ。情けない結果になったら、次はないかもしれないじゃない?」
そう言って、あっけらかんと笑う。
「だから、時間があれば、新しい知識を入れるために、本や新聞を読んだり、ネットをチェックしたりしてるんだ」
「へぇ……」
「それより、ネタ考えろよって話だけどさ。取り入れた知識はネタ作りにも役に立つから、まあ、一石二鳥ってことで。とにかく知名度をあげないとね。また、番組で一緒になることがあったら、勝手にライバルだと思っとくから、大樹くんも頑張って」
佐竹さんの言葉は、不思議なほど、ストンと心に落ちた。
大樹は、その日から、まずクイズ番組の勉強を始めた。
やればやるほど、まだまだ知らないことがたくさんあることを実感する。
知らないことを調べる。
覚える。
ひたすら繰り返すうちに、少しずつ、面白く感じるようになっていった。
そして、結果につながると、大きな達成感があった。
努力したからこそ、得られる喜びだった。
そうして、気づけば、クイズやバラエティ番組に引っ張りだこになっていた。
そのころ、愁もまた、俳優として必死に努力していた。
演技を学び、役と向き合い、結果を出す。
そして、その経験をBright Directionの活動に持ち帰ってくる。
あの時、自分たちは終わったかに思えた。
でも、そうじゃなかった。
巧実も。
海斗も。
愁も。
そして、大樹自身も。
それぞれが、自分にできることを探して、必死になった。
その積み重ねが、Bright Directionの新しい道を作った。
───────────────
「いよいよドームツアーか……」
ステージの向こうで待っていてくれるファンを思い浮かべる。
あの時のことがあったから、今のBright Directionがある。
そう思えるほどには、成長したと思う。
「大樹、何ぼーっとしてんの?」
海斗に声をかけられ、大樹は笑った。
「別に。何でもない。気合い入れて行こうぜ」
Bright Directionとして、上を目指す旅は、まだまだ始まったばかりだ。
相手とも、結局別れたらしい。
でも、大樹はすぐには許せなかった。
──足を引っ張るなよ。
愁がグループを辞めようとしていると知っても、止めようとは思わなかった。
むしろ、
「三人で再出発すればいいじゃん」
そう思っていた。
けれど、巧実は違った。
「愁がしたことは、アイドルとして許されることじゃない。でも、人間だから、失敗することもあるし、間違った選択をすることもある」
巧実は、まっすぐに大樹を見た。
「それでも愁は、自分の失敗を背負って、もう一度、ファンに夢を与えられるようなアイドルになるって決めた。だったら、俺はもう一度チャンスをあげたい」
海斗も頷いた。
「俺も」
そして、巧実は続けた。
「それに、愁のことは、きっかけにすぎない。それを払拭するくらいの力が、俺らになかったってことでもあると思う」
その言葉が、大樹の胸に深く刺さった。
「一人ひとりが、やれるだけやって、力をつけて、Bright Directionとして、また認められるようにしないと」
しばらく黙っていた大樹に、巧実は笑って言った。
「お前もさ、器用に何でもそれなりにこなすけど……一回、必死になってみろよ」
「……俺が?」
「そう。これだけは負けないってものを、身につけてみろよ」
そう言われて、大樹は改めて、いや、初めて考えた。
スポーツはできる。
勉強もできる。
でも、それは全部「できる」だけだった。
これだけは負けないもの。
今の自分には、何かあるだろうか?
しばらくして、大樹は特番のクイズ番組に出させてもらう機会があった。
結果は三位。
芸人の佐竹さんが、五連覇を果たした。
収録後、楽屋で荷物をまとめていると、佐竹さんが訪ねて来てくれた。
「大樹くん、すごかったね。負けるかと思ったよ」
「いえ、佐竹さんこそ。五連覇なんてすごいですね」
「いやー、ほっとしたよ。僕は、お笑いとしてはパッとしないからさ。情けない結果になったら、次はないかもしれないじゃない?」
そう言って、あっけらかんと笑う。
「だから、時間があれば、新しい知識を入れるために、本や新聞を読んだり、ネットをチェックしたりしてるんだ」
「へぇ……」
「それより、ネタ考えろよって話だけどさ。取り入れた知識はネタ作りにも役に立つから、まあ、一石二鳥ってことで。とにかく知名度をあげないとね。また、番組で一緒になることがあったら、勝手にライバルだと思っとくから、大樹くんも頑張って」
佐竹さんの言葉は、不思議なほど、ストンと心に落ちた。
大樹は、その日から、まずクイズ番組の勉強を始めた。
やればやるほど、まだまだ知らないことがたくさんあることを実感する。
知らないことを調べる。
覚える。
ひたすら繰り返すうちに、少しずつ、面白く感じるようになっていった。
そして、結果につながると、大きな達成感があった。
努力したからこそ、得られる喜びだった。
そうして、気づけば、クイズやバラエティ番組に引っ張りだこになっていた。
そのころ、愁もまた、俳優として必死に努力していた。
演技を学び、役と向き合い、結果を出す。
そして、その経験をBright Directionの活動に持ち帰ってくる。
あの時、自分たちは終わったかに思えた。
でも、そうじゃなかった。
巧実も。
海斗も。
愁も。
そして、大樹自身も。
それぞれが、自分にできることを探して、必死になった。
その積み重ねが、Bright Directionの新しい道を作った。
───────────────
「いよいよドームツアーか……」
ステージの向こうで待っていてくれるファンを思い浮かべる。
あの時のことがあったから、今のBright Directionがある。
そう思えるほどには、成長したと思う。
「大樹、何ぼーっとしてんの?」
海斗に声をかけられ、大樹は笑った。
「別に。何でもない。気合い入れて行こうぜ」
Bright Directionとして、上を目指す旅は、まだまだ始まったばかりだ。
