冷遇令嬢ですが、前世の知識と先見の力で運命の王第殿下と新しい国を作ります。

十六年前

ジャスミン三歳はベス子爵家の長女でつい一週間ほど前に前世の記憶を思い出したのだ。

三歳にして頭の中には二十六歳の前世の知識が詰まっている。

前世のジャスミンは日本という国で両親の営む和食料理店の経理を担当していた。

名前は安田由里と言った。

店は都内に三店舗、カフェが二店舗あった。

カフェは完全に由里の希望でやり始めたのだが、カフェの方も人気になり安田家は忙しく

家族総出で働いていたのだ。

由里には下に三歳離れた双子の妹がいて彼女達も立派な戦力であった。

大学では経営を学びゆくゆくはカフェをフランチャイズ化するのが目標だった。

由里は経営のノウハウもしっかりとしていた。

新しくメニューを考える時も原価はカフェでは四十%、料理店では三〇%を目標にしっかりと原価管理もしていた。

しかしなぜ死んでしまったかは思い出せない。

家族は皆仲が良かったので、店の経営の先頭に立っていた由里が死んでしまって困っているだろうと思うと申し訳なかった。

そんな前世を思い出してからは、ジャスミンは若干三歳にして料理やスイーツづくりに興味を示した。

そして転生チートと言う物なのか、先見(さきみ)の力があるようなのだ。

何故だかこれから起こることが分かることがある。

全ての事が分かるわけでもないし明日の事か1年先の事か決まってはいないのだが、映像として頭の中に流れてくるのだ。

この世界には魔法を使える人はもういない。

50年ほど前にはほんの少しいたようだが、文明が発達するにつけ魔法が使える人はいなくなったようだ。

今はまだ自分でもわからないが、この力の事は誰にも言わないほうが良い気がした。

魔法が消えた代わりに魔石と言うものが存在する。

前世で言う電池?のようなもので色んなものを動かす原動力になる。

ライフラインやインフラも充実している。

だから冷蔵庫なども存在している。

ジャスミンは今護衛騎士のフレデイを伴って領都をそぞろ歩きながら視察をしている。

いくら領主の娘とは言え三歳の子供いや幼児が視察などとはおこがましい。

だが、ぶらぶらしている体でその鋭い視線は観察を怠らない。

カフェや少し高級なレストランの料理の値段を見ながら、これは高過ぎこれは安過ぎなどとぶつぶつ言いながら見て回っているのだ。

護衛騎士のフレデイは

「ジャスミンお嬢様何をぶつぶつお話しされているのですか?さっきから高い安いとかいってません?」

「そうなの、お店の料理の料金の設定が高いものと安いものがあるんだもん」

「どういう意味ですか?」

「つまりここのカフェでは紅茶よりミルクを飲んだほうがお得で、シチューよりサンドイッチの方がお得って事」

「お得の意味が…」

「それぞれの原価を考えて見ているの。ミルクはミルク自体八ルピ位だけどお店の価格は十ルピでしょう?紅茶はもともと五ルピしかかからないはずなのに十二ルピもするわ」

「お嬢様、本当に三歳ですか?」

「体は三歳だけれど頭の中は十四歳のフレデイよりも上かもね」

「しぇ~」と言いながらのけぞるフレデイ

確かに三歳とは思えない語彙力に話し方も大人顔負けだ。

ジャスミンはお店の料理と価格の関係を考えるのが好きなようだ。

雑貨ショップでも同じように”高い、安い“と言いながら商品を見ているのだ。

「ねえフレデイ、もうすぐお母様の出産でしょう?きっと女の子の双子の気がする」

「ええ、なんでですか?夢でも見たんですか?」

「うん、そんな感じ。だからお花の名前二つ考えないとね」

「そうですね。そうだといいですね。お嬢様がベス子爵家の次期当主なので、ベス家も安泰ですね」

「ウフフ、変なフレデイ、まだ男の子が生まれるかもしれないでしょう」

フレデイはジャスミンが生まれた時から護衛騎士兼子守り役でもあったので、ジャスミンが可愛くてたまらない。

何でもジャスミンの言う事を聞いてしまうのだ。

でもジャスミンは聞き分けのいい子で、わがままもめったに言わない。

いつもニコニコして領都の散歩をする可愛いジャスミンが領民は大好きなのだ。

だからいつも領民はジャスミンお嬢様と言って可愛がってくれる。

市場に行くといつも何かしら貰い物でフレデイは大変なのだが、この頃はちゃんと布袋を持って行っているのだからちゃっかりしている。
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