嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜
Epi.1
──もう、男なんて懲り懲りだ。
暗い夜道をヒールで蹴りながら、星南は唇を噛みしめて駆けていた。
時折人にぶつかりながらも、足だけは止めない。少しでも立ち止まってしまうと、堪えている涙が零れてしまうから。
緒方星南。今年で二十八歳。
つい先ほど、十年以上支え続けてきた彼氏に裏切られた。
彼は俳優を目指していた。
高校時代に付き合い始め、卒業後、俳優になるために上京すると聞いたときも、星南は迷わず彼についていった。
上京してからは、大学に通いながらアルバイトを掛け持ちして彼を支えた。
オーディションのため不定期なバイトしかできない彼の助けになればと、星南は自分の稼いだバイト代を彼の生活費に充ててきた。
そして星南が大学を卒業した年、彼は念願だった芸能事務所に所属した。
けれど、事務所に所属したからといってすぐに仕事が増えるわけではなく、端役やエキストラばかりの名前すら覚えてもらえない日々が続いた。
生活が苦しいことには変わらず、会社員として働き始めた星南の部屋で、二人で同棲を始めた。
それから数年。最近はもらえる役が少しずつ増え、「俳優の仕事に集中したい」と言う彼のために生活費のほとんどを星南が負担した。家事も仕事もこなしながら、彼の夢を応援し続けた。
そして──ようやく、彼の出演した作品がヒットした。
一気に知名度が上がり、CMにも起用されるようになった。
やっと、二人の夢が叶ったのだ。
ずっと隣で支えてきたからこそ、心から嬉しかった。
ようやく努力が報われた。これからは彼と恋人として幸せになれると信じきっていた、そんな矢先。
彼の、浮気が発覚した。
< 1 / 52 >