嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜
熱を帯びた視線から、もう、目を逸らすことができなかった。
危うさを孕んだ、獰猛さを宿す瞳。わき目も振らず向けられる眼差しに、抗う意思がひとかけらも消えていく。
視線に溶かされ、唇が触れる、その寸前。
「……好き」
無意識の中で、その言葉が零れ落ちた。
「私、朔夜のことが好──っ……」
最後まで言い切るより先に、唇が重なった。
さっきのような不意打ちとは明らかに違うキス。さらに開いた口の隙間から熱が入り込み、息ごと奪われてしまいそうな深さを帯びる。
後頭部を掴まれ離れることは許されず、されるがままに口内を弄び、角度を変えながら何度も求められる。ひどく強引なはずなのに、それでも触れ方だけは、恐ろしいほどに優しい。
乱されながらも、大切に扱おうとする思いが滲む、ちぐはぐなキス。
──こんな甘いキス、知らない。
長い時間のあと、やがてゆっくりと唇が離れていく。しかしそれを惜しむ間すらもらえず、朔夜は星南の背中と膝裏に腕を回すと、そのまま軽々と抱き上げた。
「なっ……!ちょ、重いから……っ」
「暴れんな。落っことすぞ」
「っ……」
慌てて身じろぎしかけた星南は、その言葉にぴたりと動きを止める。
そして、おそるおそる朔夜の首へと腕を回した。
「ん、いい子だ」
満足そうに呟いた朔夜が、星南のこめかみにそっと口づける。
そのまま大切なものを抱えるように腕に収められ、寝室へ向かって歩き出した。