嘘つきシンデレラ〜地味男を選んだら、俺様御曹司に溺愛されました〜

 熱を帯びた視線から、もう、目を逸らすことができなかった。

 危うさを孕んだ、獰猛さを宿す瞳。わき目も振らず向けられる眼差しに、抗う意思がひとかけらも消えていく。

 視線に溶かされ、唇が触れる、その寸前。

「……好き」

 無意識の中で、その言葉が零れ落ちた。

「私、朔夜のことが好──っ……」

 最後まで言い切るより先に、唇が重なった。

 さっきのような不意打ちとは明らかに違うキス。さらに開いた口の隙間から熱が入り込み、息ごと奪われてしまいそうな深さを帯びる。

 後頭部を掴まれ離れることは許されず、されるがままに口内を弄び、角度を変えながら何度も求められる。ひどく強引なはずなのに、それでも触れ方だけは、恐ろしいほどに優しい。

 乱されながらも、大切に扱おうとする思いが滲む、ちぐはぐなキス。

 ──こんな甘いキス、知らない。

 長い時間のあと、やがてゆっくりと唇が離れていく。しかしそれを惜しむ間すらもらえず、朔夜は星南の背中と膝裏に腕を回すと、そのまま軽々と抱き上げた。

「なっ……!ちょ、重いから……っ」

「暴れんな。落っことすぞ」

「っ……」

 慌てて身じろぎしかけた星南は、その言葉にぴたりと動きを止める。

 そして、おそるおそる朔夜の首へと腕を回した。

「ん、いい子だ」

 満足そうに呟いた朔夜が、星南のこめかみにそっと口づける。

 そのまま大切なものを抱えるように腕に収められ、寝室へ向かって歩き出した。

< 43 / 52 >

この作品をシェア

pagetop