今だけの婚約者~身代わりのはずが、冷たい旦那様にお腹の子どもごと愛されていました~
「あの男のことはともかく、隣にいたおばさんはなんなの! なにか言いたそうにじろじろと見てきて、感じ悪い。『いろいろ身につけてもらわなければ困りますって』だなんて、嫁ぐ前から嫁イビリを楽しみにしてるんじゃないの」

「舞ちゃん」

 母がなだめようと伸ばしかけた腕を、舞がパッと払う。

 おそらく、義母となる方の話だろう。あまりのもの言いをしているが、顔合わせの場でそれを出していないことを祈る。

「パパ、花嫁修業なんてやらなくていいようにしてよ!」

 格上の高宮家を相手に、そんなことは言えない。

 娘の無理な要求に、両親はうろたえるばかり。舞もここまで興奮していては耳を貸さないだろうし、とりあえず落ち着くのを待つしかない。

「そうだ! いいこと考えた」

 しばらくして、舞が明るい声をあげた。

「なんだい、舞」

 満面の笑みを浮かべる彼女に、父がほっとしたように返す。

 嫌な予感がしてならない。
 この話は私には関係ない。私がこの場にとどまる理由はないと、ひっそりリビングを後にした。





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