バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
第12話:同棲じゃなくて
鷹木との同居生活が始まった。
彼は細やかに詩織を労ってくれる。
朝は彼の運転する車で職場まで送り届けられ、夜も終業に合わせて迎えに来てくれる。
どうしても仕事の都合で迎えが難しい日はタクシーを使うように言われ、彼から交通系ICカードを差し出された。
自分で運賃を支払うと伝えたものの、『俺が心配で職場から遠い場所へ連れてきてしまったのだから』と、申し出を断られてしまう。
「このICカードを使うとクラウド経由で俺のスマホにデータが来るから、無事に帰宅できたか分かりやすいんだ。あ、いや、ごめん。監視されてるみたいで気持ち悪かったら、その機能は切るよ!」
顔の前で両手を振りながら、あわてて弁明をする鷹木の姿に、詩織の口から自然と笑みがこぼれる。
ただでさえ彼には心配をかけ、身を挺して守ってもらっているのだ。カードを使うだけで安心してもらえるのであればその方がずっと良い。
詩織の心の中には、自然とそんな思いが芽生えていた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
夜、リビングの扉が開いて鷹木が帰宅する。
詩織は濡れた手を拭きながら、彼を迎えた。少し、緊張している。
「あの……もしよかったら一緒にご飯を食べませんか?」
鷹木は動きを止め、丸くした目で詩織を見つめた。視線が、テーブルの上に並ぶ温かい大皿へと向けられる。
「これ、詩織さんが作ってくれたの?」
「はい。あ……見返りのつもりじゃありません。お礼がしたい気持ちは確かにあります。でもそれより、私の希望なんです。せっかくだから鷹木さんと一緒にご飯を食べたくて」
彼に余計な気遣いをさせたくなくて、詩織は懸命に言葉を重ねた。すると、鷹木の目元がくしゃくしゃに緩む。
本当に嬉しそうな、少年の面影を残した笑顔だ。
「すごい、嬉しいよ。ありがとう。すぐ着替えてくる」
弾むような足取りで自室へ走っていく彼の後ろ姿に、詩織の口元からつい笑みがこぼれてしまう。
「うん、おいしい。このポテトサラダ、すごくコクがある」
部屋着に着替えて席についた鷹木と食卓を囲む。彼は一口ごとに声を弾ませて箸を進めた。
「茹でたニンニクが入っているんです。臭みは消えるんですけど、確かにコクが増すんですよね。よかった、お口に合って」
「こっちの肉じゃがも食べ応えがあるし、何より生姜焼き。もう本当に最高」
男性の好みに合うような定番のメニューを選んだつもりだったが、満足してくれたようだ。その食べっぷりを見て、詩織はホッと胸をなでおろした。
「ごはんのお代わりってあるかな?」
「もちろんです。よそってきます」
詩織が立ち上がり、空になったお茶碗を受け取ろうとする。だが、鷹木はそれを手元でサッと制した。
「自分のお代わりは自分でよそうよ。ありがとう。詩織さんは座って食べてて」
彼の大きな手が詩織の肩をそっと促し、椅子へと座らせる。そのまま鷹木は一人でキッチンへと向かっていった。