バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
 贅沢な大理石の廊下が奥へと伸び、その脇には広々としたレストルームや、ミニキッチンが見える。
 さらに進んだ先にある開放的なメインルームには、立派なダイニングテーブルが鎮座していた。

 ふと左を向くと、座り心地の良さそうな大きなソファセットがあり、その脇は壁一面の巨大なガラス窓になっていた。
 息を呑むほど眩い東京の夜景が広がっている。

「すごい……」

 詩織は吸い寄せられるように窓辺へと歩み寄った。
 眼下には、まるで星空を反転させたような、無数の光の粒がきらめきながら連なっている。

「スカイツリーも見えるんだよ。ほら、あそこ」

 鷹木が隣に並び、ガラスの向こうを指差した。

「わ、本当だ」

 夜の闇の中に、白く幻想的に浮かび上がる大きな塔が見える。

「うちのマンションからの景色もなかなかだけど、スカイツリーは見えないもんな」

 光の帯が、塔の展望台の周りをくるりと一周する。

「慧さん見て、いまクルって明かりが……」

 嬉しくなって隣の鷹木を振り返る。だが、詩織の言葉が喉で止まった。

 てっきり彼も一緒に夜景を見ていると思っていた。
 けれどすぐ間近に立っていた鷹木の熱い双眸は、景色ではなく、詩織のことだけを真っ直ぐに捉えていたのだ。

 隠そうともしない、熱を帯びた柔らかい表情で見つめられ、詩織は急に心臓が激しく脈打ち出すのを感じた。
 思わず顔を下に向けて視線を外す。

 詩織の身体を後ろから包み込むようにして、鷹木の長く力強い腕にグッと引き寄せられる。背中に彼の温かい胸板がぴったりと密着した。
 詩織の指先が、微かな震えを帯び始める。

「こわい?」

 耳元で、鼓膜を擦り抜けるような声で囁かれた。

 『大丈夫』と言おうとして、詩織は口をつぐむ。
 有希と話した事を思い出す。鷹木の前では素直になると決めたのだ。本当の気持ちを、彼に知ってもらいたかった。

「少しだけ。でも……」

 詩織は意を決して顔を上げる。鷹木の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

「それ以上に、すごく、嬉しい気持ちです」

 言い終わるか終わらないかのうちに、視界が鷹木の端正な顔で埋め尽くされ、言葉ごと唇を塞がれた。

 鷹木の柔らかな唇が、詩織の唇にしっとりと重ねられる。
 少しずつ角度を変える。隙間を埋めるように、啄むような優しいキスを何度も何度も繰り返した。
 
 ちゅっ……

 静まり返った広い客室に、濡れたリップ音だけが小さく響く。

「くち、開けて」

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