バツイチ×未経験の私は、初恋の豪腕弁護士から極甘に溺愛される
「確かに、怪我をしてしまうことはあります。施設で過ごすうちに体調が悪くなることもあります。でも、だからこそ、大事に至らないために、うちはすぐ病院へ連れて行っているんです。全ての事故を防ぐ事はできません。でもそれを、意図して行う虐待と同じ扱いにするのは、やはり間違っています」

 詩織はしっかりと麗子を見つめた。

「元夫のこともそうです。彼は私に暴力をふるいました。精神的な苦痛も与えました。確かに母親思いの一面がありましたが、だからと言って、私を酷い目に合わせて良い理由にはなりません。今回の逮捕は、彼自身が招いた結果です」

 二人の視線が激しく火花を散らし絡み合う。広場の空気が、張り詰めた弦のように固くなる。

「……そう、じゃあ鷹木さんと別れる気はないのね」
「私からは切り出しません」
「キスしたのよ私たち。あんたも見たでしょう?」
「たしかに、それらしい場面を見ました。でも、彼の言い分を聞いていないので判断できません」
「あんたみたいな底辺バツイチが、彼にふさわしいと本気で思ってるの?」

 麗子はタバコを指に挟んだまま、じりじりと距離を詰めるようににじり寄ってきた。

「彼みたいな完璧な人、あんたには似合わない。別れなさい」
「お断りします」

 麗子はキッと目を吊り上げると、タバコをアスファルトの上に投げ捨てた。パンプスの先で踏みつぶしながら、自身の鞄をさぐり、何かを取り出す。
 詩織の胸元へ、数枚の写真を乱暴に押し付けた。

 そこに写っていたのは、詩織の兄と、年老いた両親だ。

「じゃあ次はあんたの家族ね。どうやって炎上させようかしら。……兄は暴行罪疑惑、父親は職場でのハラスメント、母親は……そうね、ホストに入れ込んだってことにでもする? 本当にハメてやっても面白いわね」

 写真を持つ詩織の手が、カタカタと震え出す。
 自分のせいで、大切な家族が一人ずつ人質に取られていく。恐怖で心臓が潰れそうになりながら、詩織は渡された写真を強く握り締めた。
 そして、ぐっと顔を上げる。

「あなた、最低ですね。あなたみたいに心が汚い人には、絶対、慧さんを渡しません」

 麗子の顔が、怒りでカっと赤く染まっていく。

「……このっ!」

 麗子は狂ったように手を高く振り上げた。
 彼女の長く伸ばした指先で、鋭い爪が不気味に光る。

「バカにするんじゃないわよ!」

 容赦なく腕が振り下ろされる。

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