好きな男の子が幽霊になって会いに来た話。
私は、ちゃんと歩いている。

前を向いて、帰っている。

なのに。

胸の奥には、大きな穴が空いたままで。

そこから、何か大切なものが、

静かに、静かに、零れ落ち続けている気がした。

「……要くん。」

思わずこぼれた一言に、

優華は、はっとして反射的に自分の口を塞いだ。

返事なんて、あるわけがない。

もう、分かっている。

自分が一番、分かっているはずなのに。

乾いた、自嘲気味の笑みが、唇に浮かぶ。

その、次の瞬間。



「んー?」



――聞き慣れた声が、耳に届いた気がした。



心臓が、強く跳ねる。

咄嗟に足を止め、辺りをきょろきょろと見渡す。

< 20 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop