好きな男の子が幽霊になって会いに来た話。
溢れ続けていた涙を、何度も、何度も、拭った。

震える指で濡れた頬をなぞって、無理やり、呼吸を整える。

ゆっくりと、立ち上がる。

足はまだ、少しふらついていたけれど、

それでも、倒れずに、前を向いた。

そして、そのまま。

何事もなかったみたいに、自分の席へと戻る。

そうして、葬式は終わった。

生徒たちは、現地で解散となり、会場の外へ、まばらに散っていく。

誰かは、友達と寄り添いながら。

誰かは、肩を抱き合いながら。

優華は、誰とも目を合わせないまま、会場に背を向けた。

そのまま、一人で歩き出す。

外は、すっかり夜が更けていた。

空には、静かに月が浮かんでいる。

月明かりに照らされた道を、優華はゆっくりと、帰路についた。

靴音だけが、一定のリズムで響く。

それが、やけに大きく感じられた。

夜風が、頬を撫でる。

少し冷たくて、その感触だけが、やけに現実的だった。

< 19 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop