末っ子王女はあこがれの(元)魔術師団長に欲情してほしい
プロローグ
「この先に、あの人はいます」
 魔鉱石が眠る洞窟内。空気が重く沈み、まるで見えない糸が無数にも張り詰めているかのような緊張感が肌を刺す。
「アマリア。悪いが俺たちはここより先に進めない……」
 悔しそうに顔をしかめながらも、カウノの言葉は微かに震えていた。王国魔術師団の団長を務める彼でさえも、大量の魔鉱石が放つ濃密な魔力に当てられ、これ以上、奥へ踏み込むのは無理だと言う。それほどまでに、この洞窟の先には強大な魔力が渦巻いているのだ。
「ここからは、わたし、一人で行きます」
 アマリアも同じ魔術師団に身を置く魔術師である。切り取った夜空を思わせる紺色の瞳にゆるぎない決意を宿し、絹を滑らせたような赤茶の髪は、魔鉱石の光によって艶やかに輝いていた。
 二十二歳という若さで副団長の地位に上り詰めた実力は誰もが認めており、その魔力は確実にカウノを上回っている。
「団長。もしわたしの魔力と魔鉱石の力が干渉して暴走が始まったら、すぐにこの場を封鎖して逃げてください」
 凜とした声を響かせるアマリアの指示は、驚くほど冷静だった。
「だが、そうするとおまえは……」
 カウノの言葉をすべて聞く前に、アマリアは一歩を踏み出し、目の前に立ちはだかる魔鉱石の壁にぴたっと両手を添える。
「今から封印を解きます。危険ですので、下がってください」
 アマリアが触れた場所からはまばゆい一筋の光が生まれ、それが次第に大きくなって目の前の魔鉱石の扉のすべてを覆い尽くした。
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