天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
律くんが、そっぽを向いたまま小さくつぶやいた。

その姿を見て、久保田先輩が、その頭をなでる。



「律は、マリーでずっと、杏ちゃんの動画を見てたんだ。だから、こいつの頭の中では、マリーと杏ちゃんの料理がセットになってるんだと思う」

「はぁ……」



さっき、律くんからも聞いたけど、重すぎる。
いろんな意味で。



「マリーの一日復活をあきらめかけていたところに、律がずっと憧れていた子に出会って。もしかして実現できるんじゃないかなって、二人で盛り上がっちゃって」



痛い、痛い!

昨日みたいに「無理です」って、ものすごく言いにくい。

黒歴史みたいなあの動画に対して、そこまで言ってもらえるのは、ありがたいことなのだとは思う。

でも、引き受けますとは簡単に言えない。
料理が好きだから余計に。



「お願いします。力を貸してください」



久保田先輩に再び頭を下げられて慌てていると、律くんまで頭を下げてきた。

困った。どうしよう。



「……マリーを見てから、考えます」



私ってば、なんてことを言ってしまったんだろう。
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