天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
「田中さんは、東京の娘さんのところに引っ越し、榎本さんは老人ホームに入所、佐々木さんは去年亡くなってる。常連さんのほとんどが、もうこの辺にはいないよ」
商店街だけじゃなく、人もいなくなってきてるんだ。
自分とは全然関係のなかった場所なのに、それでも寂しい気持ちが込み上げてくる。
「ばんばん撮っていいよ! なんなら動画にする?」
私の写真や動画で、お客さんが集められるとは思えない。
でも、少しでも力になりたい。
「杏ちゃん……顔も撮っていい?」
「お断りします~」
「撮りたいな。髪を下ろしてるのもかわいかったけど、ひとつに結んでるのが、ものすごくかわいいし」
莉子ちゃんによく言われていた「髪はちゃんと毎朝、といてこようね」という言葉。
長年、ぼさぼさじゃなかったらオッケーって思っていたけど、少しだけ改めた。
そこを、すぐに拾ってくれるところが、さすが春くん。
「SNSには絶対に出さないし」
「それ、撮る意味ある?」
集客に使わない写真の使い道とは?
「うん。俺の思い出用。大丈夫。律にも渡さないから」
キッチンにいた律くんが、急に手を洗ったかと思うと、自分のバッグのところまで行く。
そして、スマホを持って戻ってきた。
「杏、こっち向いて」
商店街だけじゃなく、人もいなくなってきてるんだ。
自分とは全然関係のなかった場所なのに、それでも寂しい気持ちが込み上げてくる。
「ばんばん撮っていいよ! なんなら動画にする?」
私の写真や動画で、お客さんが集められるとは思えない。
でも、少しでも力になりたい。
「杏ちゃん……顔も撮っていい?」
「お断りします~」
「撮りたいな。髪を下ろしてるのもかわいかったけど、ひとつに結んでるのが、ものすごくかわいいし」
莉子ちゃんによく言われていた「髪はちゃんと毎朝、といてこようね」という言葉。
長年、ぼさぼさじゃなかったらオッケーって思っていたけど、少しだけ改めた。
そこを、すぐに拾ってくれるところが、さすが春くん。
「SNSには絶対に出さないし」
「それ、撮る意味ある?」
集客に使わない写真の使い道とは?
「うん。俺の思い出用。大丈夫。律にも渡さないから」
キッチンにいた律くんが、急に手を洗ったかと思うと、自分のバッグのところまで行く。
そして、スマホを持って戻ってきた。
「杏、こっち向いて」