天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
「練習しようよー」



私の声なんて届かないかなって思いつつも、言うだけ言ってみた。



「しよ!」

「そうだよね」



意外と、二人ともすぐに切り替えてくれた。

よかった。

春くんは、SNSを開設したり、似たようなイベントのやり方を調べたりする。

律くんと私は、フライパンを渡すタイミングの練習。



「もっと早く俺にフライパンちょうだい。卵が固まりすぎて破れる」

「わかった」



何回も試行錯誤(しこうさくご)を繰り返していると、律くんが右の手首をぶらぶらと振り始める。



「これ、当日何回するんだろうな。腕がもつか心配になってきた」

「私もするよ?」



お互いの腕を見比べてみると、律くんの方が細い。

そりゃあそうだよね。先月まで小学生だったんだから。



「……いらない」



お姉さんらしく仕事を引き受けようとしたのに、めちゃくちゃむっとされた。

どうして?



「当日までに鍛えるから大丈夫」



本番まで3カ月とちょっと。

そんな短期間で、筋肉ってつくものなの?

当日、律くんがしんどそうになってきたら代わったらいいのかな。

あれこれ考えていると、ふと出来上がった合計10個のオムライスが視界に入った。

思いついて、ケチャップでハートを描く。

私にしては、うまくできたつもり……。



「なんだ、これ」

「杏ちゃん、貸して」
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