天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
ところがある日、動画の更新がぱたりと止まる。
「長い間ありがとうございました」みたいな引退宣言があるわけでもなく、急に忘れ去られたかのように。
オムライスが最後だった。
何度もそのアカウントを見に行っては、投稿がないことにがっかりしながら、オムライスを作るその子を見る。
「律、オムライス食べたいの?」
あまりにも俺がオムライスの動画ばかりを見ているものだから、ばあちゃんがそう言って作ってくれた。
それなのにかわいくない俺は、すねた。
「違う、こうじゃない」
中の具が違う、味付けはこうじゃない、卵のくるみかたが違う。
我ながら、ひどい孫。
それでも、ばあちゃんは「今度こそは、どうだ」と作ってくれる。
そこで気づいた。
俺って、渋々(しぶしぶ)マリーに来ていると思っていたけど、この空間が好きだったんだなって。
いつだって、ばあちゃんは全力で甘えさせてくれる。
わがままを言っても、カラカラと笑い飛ばしてくれる。
ばあちゃんといると、マリーゴールドが胸の中に咲いたみたいに明るくなる。
小学校5年生の春、喫茶マリーの閉店が決まった。