亀を助けたら竜宮城に招待(誘拐)されましたが、私は今幸せです。
 乙葉は確かに美しい。海を彷彿とさせる長い水色の髪と髪よりも濃い青い瞳は、普通の人間ではありえないことである。中には極々僅かに紫色の瞳を持つ人もいるらしいが、それでも水色はありえない。
 そう、ありえないことだらけなのだ。
 七海はまだここにいることが夢だと疑ってない。
 そんな七海を感じ取ったのだろう、乙葉はこちらにおいでともはやふて寝状態の七海を起こして手を握った。

「温かいでしょう? 私の手の感覚は? 心臓の鼓動だって脈を通して感じるでしょう? ねえ、七海さん。ご理解いただけましたか?」

 七海は何も言葉を紡げなかった。確かに乙葉というひとの体温や息遣い、脈から感じる心臓が動く感覚がリアルに伝わってくるからだ。
 そして、七海は悟った。ここは海の奥深いところで、もう二度と陸には帰れないのだと──。
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