「あの時の返事を聞きに来た」と言った先輩は、どうにも私にご執心なようです
再会
 ピンポーン

 平和極まりない休日。
 土曜日の夜というこの上ないゴールデンタイムを打ち破るように、聞き慣れたインターホンが鳴り響いた。

(何だろう。何か頼んだ覚えもないし……)

 女のひとり暮らしは何かと物騒だ。
 不用意に出ないのが鉄則だと決め込み、体を起こしかけて再びソファへと倒れ込む。そのままダラダラと過ごしていれば、程なくして2度目のインターホンが響いた。

ピンポーン

 ……

ピンポーン、ピンポーン

 ……断固として居留守を決めてやる。

 そう思った矢先。

ピンポンピンポンピンポンピンポン

「はいはい!! いますよ、いますから!!」

 非常識すぎる連打に苛立ちが限界突破した。相変わらずの沸点の低さだが、折角のゴールデンタイムを邪魔されれば誰だって少なからず苛立つだろう。
 何故居留守がバレているのかという疑問すら吹き飛び、私は相手を返り討ちにする勢いで勢いよくドアを開け放った。

「あ、やっぱりいた。久しぶり、紗世(さよ)」

 開け放った扉の先に立っていた人物を目にした瞬間、背中にどっと冷や汗が吹き出した。

 もう二度と会うはずがないと思っていた男が、当たり前かのようにそこにいた。

(なんでっ…!?)

 瞬時に後悔が押し寄せる。どうしてチェーンロックをかけたまま対応しなかったのか。そうしていれば、こんなにも無防備に隙を見せることもなかっただろうに。

「っ!」

 反射で扉を力いっぱい閉めようとした瞬間、躊躇なく隙間に足が滑り込んできた。一目で高級と分かる仕立ての良い革靴が、傷つくのも厭わない勢いで挟み込まれる。

「っつ……痛った」
「ちょっ、…!」
「話したいことがあるのを思い出してさ。急で悪いけど、家に上げてくれない?」

 ヘラヘラと人畜無害そうな笑みを浮かべているが、私は騙されない。
 整いすぎた眉目に、モデル顔負けのスタイル。洗練された上質なスーツを完璧に着こなし、周囲の視線を一瞬で奪っていくこの男。その優しげな面の裏にある執念深さと強引さを、私はよく知っている。

「私は先輩と話すことなんて何1つありません!」
「まあまあ、そう言わずにさ。せっかく会いに来たんだから」

 口調こそ柔らかいが、ドアを押し開けてくる力は圧倒的に強い。
 私が全力で抵抗して顔を歪ませていると、廊下の向こうからエレベーターの到着を告げる電子音が響いた。

「おっと。ほら、誰か来るよ。このまま廊下で騒いでていいの?」
「……っ、誰のせいだと……!」

 あまりに卑怯だ。
 けれど、近隣の目がある状況でこれ以上押し問答を続けるわけにもいかない。

 ほんの数秒葛藤した末、私は苦虫を噛み潰したような心地で彼を部屋の中へ招き入れるしかなかった。
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