「あの時の返事を聞きに来た」と言った先輩は、どうにも私にご執心なようです
あの時
大学のサークルで出会った1つ上の先輩。
無意識の内に目を引くほど整っている容姿に加え、育ちの良さを覗かせる洗練された立ち振る舞い。成績も優秀で、誰にでも分け隔てなく爽やかな笑顔を向けるその人は、キャンパス内でも一目置かれる有名人だった。
ただそれは、『大多数の目には』である。
(……なんか、すごく胡散臭い)
私が彼に抱いた第一印象はマイナスなものだった。正直に言って、苦手なタイプ。
彼の周りには常に華やかな女子たちが群がっており、同性からも慕われていた。住む世界が違うのは最初から分かっていた。ただ、それでもドラマの中の登場人物を見ているような感覚に苛まれ、どことなく苦手意識を抱かせた。
「紗世ちゃん」
けれど多くの人が彼の顔色を窺い、機嫌を取ろうとする中で、彼がふいに視線を向けてくるのは決まって私だった。
周囲の熱狂に加わらず、そっけなく接する私が気に食わないのか。それとも、単なる気まぐれな退屈しのぎなのか。
真意は分からないが、どこか面白がるような奥底に揺らめく熱を孕んだその瞳に数えきれないほど見つめられた。その視線に毎回少なからず動揺させられることも、彼に苦手意識を抱く理由の1つだったのかもしれない。
「お疲れ様です、先輩」
だからこそ、私は頑なにその人の名前を呼ばなかった。
周囲が親しみを込めて名前で呼ぶ中、私だけは徹底して『先輩』と呼び続けた。
もちろん、彼の名前を知らないわけでも忘れたわけでもない。
ただ、何となく呼びたくなかった。彼を『特別枠』ではなく『大多数の1人』として認識していると、そう言外に伝えたかったのかもしれない。今思えば、なんとも幼く子どもじみた意地だったと思う。
それは、あの夜だって変わらないことだった。
無意識の内に目を引くほど整っている容姿に加え、育ちの良さを覗かせる洗練された立ち振る舞い。成績も優秀で、誰にでも分け隔てなく爽やかな笑顔を向けるその人は、キャンパス内でも一目置かれる有名人だった。
ただそれは、『大多数の目には』である。
(……なんか、すごく胡散臭い)
私が彼に抱いた第一印象はマイナスなものだった。正直に言って、苦手なタイプ。
彼の周りには常に華やかな女子たちが群がっており、同性からも慕われていた。住む世界が違うのは最初から分かっていた。ただ、それでもドラマの中の登場人物を見ているような感覚に苛まれ、どことなく苦手意識を抱かせた。
「紗世ちゃん」
けれど多くの人が彼の顔色を窺い、機嫌を取ろうとする中で、彼がふいに視線を向けてくるのは決まって私だった。
周囲の熱狂に加わらず、そっけなく接する私が気に食わないのか。それとも、単なる気まぐれな退屈しのぎなのか。
真意は分からないが、どこか面白がるような奥底に揺らめく熱を孕んだその瞳に数えきれないほど見つめられた。その視線に毎回少なからず動揺させられることも、彼に苦手意識を抱く理由の1つだったのかもしれない。
「お疲れ様です、先輩」
だからこそ、私は頑なにその人の名前を呼ばなかった。
周囲が親しみを込めて名前で呼ぶ中、私だけは徹底して『先輩』と呼び続けた。
もちろん、彼の名前を知らないわけでも忘れたわけでもない。
ただ、何となく呼びたくなかった。彼を『特別枠』ではなく『大多数の1人』として認識していると、そう言外に伝えたかったのかもしれない。今思えば、なんとも幼く子どもじみた意地だったと思う。
それは、あの夜だって変わらないことだった。


