「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う
2人はミリ単位の精度が要求される冠動脈の吻合(ふんごう)作業を、無駄な会話ひとつ交わさずに進めていった。

​「持針器」

「はい」

​「血管鉗子」

「はい」

器具が渡されるたび、金属同士が微かに触れ合う硬質な音だけが手術室に響く。

周囲に詰めている麻酔科医や助手、外回りのナースたちは、息をのんでその光景を見守っていた。

配属されて僅か半年の新米看護師が、あの桐生蒼真の手技に寸分の遅れもなく追従している。

​普通の新米であれば、桐生の放つ圧倒的なプレッシャーと冷徹な視線に気圧され、タイミングがずれるものだ。

だが、桜井凛は違った。

凛の瞳にあるのは、個人的な感情ではなく、「患者の命を救うために完璧な仕事をこなす」という固い意思だけだった。

桐生のハイスペックな容姿にも、病院内での立場にも、凛の心は微動だにしない。

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