「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う
紙面の上で、赤ペンを滑らかに走らせた。

​『本症例における術後3日目の水電解質バランスの推移について、K値(カリウム値)の微動を見落とすな。心電図上T波の変化が現れる前のわずかな数値変動こそが、致死的不整脈の予兆となる』

​『患者の主訴「少し胸が重苦しい」に対し、精神的ストレスと安易にアセスメントするな。術後グラフトの微小血栓形成を疑い、直ちに12誘導心電図と心筋酵素値の再検を提案すべきである』

​余白という余白を埋め尽くしていく、ビッシリと書かれた赤字。

一見すると、新人のやる気を削ぎ落とすための嫌がらせのような厳しさである。

しかし、そこに書かれているのは、教科書には載っていない臨床の第1線で命を救い続けてきた桐生蒼真の膨大な知識と、究極の手技のノウハウそのものだった。

​「ここまで書けば、凛は必ず俺の意図に気づく。……気づいて、俺だけを見ろ、凛」

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