「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う
桐生は頭を抱え、ソファーに深く倒れ込んだ。

​白衣を脱ぎ捨てた夜、1人で苦い酒をあおる桐生の姿には、院内を恐れさせる「氷の副医局長」の面影など微塵もなかった。

ただ1人の、自分になびかない高嶺の花に恋い焦がれ、自尊心を削り取られ、余裕をすっかり失った哀しい男の姿があるだけだった。

​(凛……どうすればいい? 俺のすべてを捧げても、君のその澄んだ瞳は揺らがないのか……?)

​桐生は自室の暗闇の中で、何度目になるかわからない彼女の名を呟いた。

​その頃、自分のアパートの小さな部屋で、凛もまた眠れぬ夜を過ごしていた。

​机の上に広げられた、桐生の赤字がびっしりと書かれたレポート。

凛はその文字を、指先でそっと撫でた。

​(桐生先生は……どうして私に、ここまでの情熱を注いでくださるんだろう)

​
< 60 / 96 >

この作品をシェア

pagetop