「氷の天才外科医の激甘な課題添削」 冷徹な外科部長は難攻不落の愛し君だけに甘く狂う
「……怖かった」

​桐生は掠れた声で漏らした。

冷徹な副医局長としての仮面はどこにもなかった。

そこにいたのは、1人の女性を失う恐怖に怯え、余裕をなくした1人の男だった。

​「患者を失うこと以上に……君の手が血に染まり、君を傷つけてしまうことが怖かった。……凛、お願いだ。俺を突き放さないでくれ。君の正論も、ガードの硬さも分かっている。だが……俺には君が必要なんだ」

​凛はそっと息を吐くと、自分を強固に抱きしめる彼の腕に、自分の手を重ねた。

そして、ゆっくりと振り向くと、彼の琥珀色の瞳をまっすぐに見つめた。

​「……ずるいです、蒼真さん」

​「え……?」

​桐生が弾かれたように顔を上げる。

凛の表情には、これまでの冷やかな拒絶の壁など微塵もなかった。

そこにあったのは、照れくさそうに微笑む、1人の恋する女性の柔らかい素顔だった。

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