色褪せて、着色して。Ⅸ~クレマチス編~

はじまりはいつも、

「ごちそうさま」
 その日は、いつものように穏やかな午後だった。
 バニラお手製のパンと。
 野菜のポタージュを食べ終えて。
 食後の紅茶を飲んでいるときだった。

 うん。
 こういうときってたいてい誰かやって来るのがワンパターン。
「太陽夫人おられますかー?」と玄関の外からクリス様の声がして。
 そして、王家のごちゃごちゃに巻き込まれる。
 お決まりのパターンには、流石に慣れてきてしまった。

 だが、今回は違った。
「うん? なんか、外が騒がしくない?」
 私の名前は、セシル・マルティネス・カッチャー。
 この国での呼び名はマヒルで通っている。
 自他共に認める美人とは、この私のこと。
「そうですわね」
 と言って、目の前に座って一緒にお茶を飲んでくれるのは。
 私の侍女、バニラだ。

「まーた、クリス様かなあ」
 ため息交じりに私は立ち上がった。
 ただ、聴こえてくるのはクリス様の声ではない。
 私は魔力はないが、スペックがピアノなので。
 異常なくらい耳が良い。
 聴こえてくるスズメと誰かの声に、またろくでもない事件への幕開けかと考える。

 事件の始まりは。
 いつだって、王家の呼び出しから始まるのだから。
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