色褪せて、着色して。Ⅸ~クレマチス編~
 バニラが玄関を開けると。
 騎士の姿はなく。
 護衛の一人であるスズメが男の子を羽交い絞めしている光景だった。
 12~13歳くらいの男の子だろうか。
 黒いズボンに白いシャツ。
 顔は見たことないけど。
 察するに、秘密の館で働く男の子なのかな。
 だけど、なんで。
 スズメが羽交い絞めしているのだろうか。

「おい、大人しくしろ!!」
 子供相手に声を荒らげるスズメに対して。
 男の子はスズメの手を思いっきり噛み付いた。
 だが、スズメは国家騎士。
「痛いだろうが!」と言って、びくともしない。

「ええ…どういう状況?」
 冷めた目でスズメを見てしまう。
 私は世間的に隣国、スカジオン王国の姫君ということになっているため。
 護衛がついているのだが。
 真面目すぎるスズメに少々、引いてしまっていた。
 子供、相手だぜ。
 しかも、あの秘密の館で働く男の子だ。
 こっちが少しでも傷つけたら。
 あのユキ様が黙っちゃいないだろう。
「こいつが、勝手に家に侵入しようとしたんです」
 暴れまわる男の子を力いっぱい抑えつけるスズメ。
「はなせよ、クソが!」
「あんだと、その口の利き方は!!!」
 2人を見ていて、ため息がこぼれた。

「おれは、この女に用があるんだ!!!」

 男の子は私を見た。
 私の後ろに立っていたバニラは、
「このおんな・・・?」
 と呟いた。
 あ、ヤバイ。
 バニラから怒りのオーラが溢れ出てくるのがわかる。
 こんなに可愛くて家事全般を完璧にこなすバニラだが。
 実を言うと、正体は妖精。
 妖精は怒らせると本当にヤバイということをお知らせしよう。
 恐らく、この国が一瞬で吹っ飛ぶ。
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