学校一の爽やか王子は、私にだけ【一途な独占欲】を隠さない。〜お揃いの指輪とヒミツの放課後〜
「……ひなたくん、手、ちょっと恥ずかしい、よ……?」
夕暮れの公園のベンチ。ぎゅっと握られたままの右手が熱くて、私はうつむきながら小さく身をよじった。
するとひなたくんは、「あ、ごめん」とはにかむように笑って、名残惜しそうにゆっくりと手を離してくれた。解放された私の手には、彼のあたたかい体温がしっかりと残っていて、それだけで心臓がトクンと跳ねる。
「あ、そうだ。これ……引っ越しの片付けの合間に、お母さんと一緒に焼いたんだけど、もしよかったら食べて?」
私は緊張を隠すように、スクールバッグから可愛いラッピングに包まれた小さな袋を取り出した。中に入っているのは、星の形をした手作りのクッキーだ。
「え、りあの手作り!? めちゃくちゃ嬉しいんだけど!」
ひなたくんはパッと顔を輝かせると、子供の頃みたいに無邪気な笑顔で袋を受け取った。
学校で見せる完璧な王子の仮面が外れて、私の前だけで見せてくれるこの素直な反応が、たまらなく愛おしくてドキドキしてしまう。
「食べていい? ……あ、でも、チャック閉まってて開けづらいな」
ひなたくんが苦戦しているのを見て、私は「あ、私が開けるよ」と手を伸ばそうとした。だけど、ひなたくんはそれをひょいっとかわすと、ベンチの距離をぐっと詰めて、私のすぐ目の前まで顔を近づけてきた。
「ねえ、りあ。……あ〜ん、して?」
「えっ……!? ひ、ひゃいっっ!?」
不意打ちの「あ〜ん」の要求に、私の頭は一瞬で真っ白になった。
ひなたくんは長い前髪の隙間から、悪戯っぽく、だけど熱い瞳で私をじっと見つめている。断らせないオーラに負けて、私は震える手でクッキーを1枚つまみ、彼の綺麗な唇の前へと恐る恐る運んだ。
サクッ、と小気味いい音がして、ひなたくんが私の指先から直接クッキーをくわえ込む。そのとき、彼の柔らかい唇が、ほんの一瞬だけ私の指先に触れた。
「……っ!」
心臓が爆発するんじゃないかっていうくらいの衝撃が走って、私は慌てて手を引っ込めた。顔が耳まで真っ赤になっていくのが、自分でもハッキリとわかる。
「ん、めちゃくちゃ美味い。やっぱりりあの作ったお菓子が世界で一番好き」
ひなたくんは本当に幸せそうに目を細めて、美味しそうにクッキーをモグモグと食べた。
そんな風にストレートに褒められるなんてウブな私には刺激が強すぎて、もうベンチから転げ落ちそうなほどキャパオーバーだった。