優しい死神さんと、空気じゃない私

幸福

 玲奈は照れくさそうにゆっくりと彼へ近づくと、そっと投げかけるようにに優しくつぶやいた。

「こんにちは……死神『さん』」

 その恥じらう姿に、死神は悲しげな瞳のまま、嬉しそうに微笑んだ。

「やあ、玲奈『ちゃん』」

 彼の返しにますます恥ずかしくなった玲奈は、誤魔化すように頭上に高く生い茂る木々を見上げた。

「……ここが、死神さんの生まれた場所なのね」

「そうだよ」

「なんだか不思議。死神さんと神社が関係しているなんて」

 死神は「そんなことないよ」と微笑んだ。

「光が強ければ強いほど、その足元には濃い『影』ができるだろう? 僕はその神社の、神聖な影の寂しさから生まれた死神なんだ。誰もこの場所に、そんな影があるなんて思いもしない。けれど……誰にも見つけてもらえない孤独な影は、確かに存在するんだよ」

 玲奈はその深い言葉の意味を探るよりも、いま彼とこうして言葉を交わしていること自体が嬉しかった。

 頭上の木々を見上げながら、「ふーん」と楽しそうに体をゆらゆらと揺らす。

 その無垢な仕草に、彼はそこで初めて、愛おしそうに目元を和らげた。
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