冷徹社長はトラウマ秘書を愛で包む
「私のドレスなのに! 横暴すぎます!」

 謎の言い争いを始めた二人に、店主が控えめに口を挟む。

「ではセミオーダーはいかがでしょう。既存デザインをベースに、多少のアレンジも可能ですよ。製作期間も短く済みます」

 渡りに船とばかりに紀沙はこの提案に飛びついた。

「ぜひ、セミオーダーでお願いします」
「かしこまりました」

 店主の嬉しげな返事に、御堂がやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

「楠はわがままだな」
「鏡見て言ってくださいよ」

 言い返しながら、ふと紀沙は思い当たった。

(あれ? 私は最初、既製品を買うつもりだったのに、結局ちょっとグレードが上がってない?)

 ドア・イン・ザ・フェイスという単語が脳裏をよぎるが努めて無視する。言いくるめられているなんて気のせいだ。気のせい。

 必死に言い聞かせていると、店主がドレスのデザインカタログを机に広げた。目に飛びこんでくるのは、裾が花びらのように広がる淡い桃色のドレスや、花柄のレースが幾重にも重ねられた繊細なマーメイドラインドレス。今まで見たことのない華やかさにくらくらする。

 御堂は吟味するようにゆっくりページをめくり、さらりと告げた。

「まあいい。何と言おうとウェディングドレスはオーダーメイドにするからな」
「きゅ、急に何を」

< 14 / 52 >

この作品をシェア

pagetop