義姉に全てを奪われ虐げられた令嬢は、青い小鳥の王子に溺愛される
「クロウリア」

 ルギオンの良く響く低い声が、クロウリアを呼び止めた。クロウリアは立ち止まり、ルギオンへ体を向ける。

「はい」
「お前は烏たちを使役できるだろう。なぜ彼女を見張らせない?」

 この国には鳥族の者だけではなく、様々な種類の野生の鳥もいる。クロウリアは烏の属性を持っており、野生の烏を使役することができた。

「……シーラ様が窮屈な思いをするだろうから見張るようなことはしなくていいと、ルリウス様に言われておりました」

 クロウリアが答えると、ルギオンは小さくため息をつく。それから、静かにクロウリアを見た。ルギオンの金色の瞳には有無を言わさない圧がある。それを、クロウリアは黙って見つめていた。

「ルリウスがどう言おうと、彼女はいずれ王太子妃になる方だ。何かあってからでは遅い。今回のことでよく分かったことだろう、烏たちに彼女を見張らせろ。これは王弟命令だ。ルリウスの許可は取らなくていい、兄上には言っておく」
「……かしこまりました」

 クロウリアは胸に片手を当ててお辞儀をすると、ルリウスたちの後を追うようにルギオンの前からいなくなった。

 その場にルギオン一人だけが取り残されると、爽やかな風が吹いて花弁が舞う。辺り一面、花の良い香りが広がった。

(また話を聞かせてください、か。あんなことがあったのに、俺を恐れることなくまた会いたいと言うなんて、とんだお人よしだな)

 ふと、懐かしい笑顔を思い出す。兄である王に愛され小鳥のように繊細で可愛らしいその人も、昔同じようなことを言って嬉しそうに微笑んでいた。シーラの笑顔がなぜかその時の笑顔と重なり、ルギオンは瞳を閉じて微笑むと小さく首を横に振った。


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