ファーストキスのプロデュース 〜昔フラれた幼なじみを最高の彼氏に育てる方法〜

7-3. 妃菜のささやき

三階の廊下を包み込む夕闇は、容赦なく濃さを増していた。


扉の飾りガラスから漏れる淡い光の筋。そ


の向こう側で、片膝をついた東堂に手を握られ、頬を紅潮させている夏凜の姿が、海斗の網膜に焼き付いて離れない。


指先ひとつ動かせない。



海斗は薄暗い廊下の真ん中で棒立ちになっていた。


プールサイドで触れ合った夏凜の温もり、河原で半分こにしたクレープの甘い匂い、ノートの余白に書き留めたスタイリングの記憶――それら全てが、手のひらをすり抜けて冷たい底へと沈んでいくようだった。


「……あれぇ? 神崎くん、こんなところで何してんの?」


背後から唐突に投げかけられた甘い声に、海斗の肩が小さく跳ねた。
< 134 / 258 >

この作品をシェア

pagetop