妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~

5.気づかされたもの

間抜けな声になってしまったのは、仕方がないと思う。

 つい先ほどまで婚約解消の話をしていたのに、突然求婚されたのだ。

 だから、つい聞き直してしまった。

「あ、あの……。今、何と仰いましたか?」

「私と結婚してほしいと言った」

「……私と、ですか?」

「他に誰がいる?」

 私は思わず周囲を見回したが、図書室には私たち二人しかいない。

 公爵閣下の顔をうかがうと、とても冗談を言っているようには見えない。

「で、ですが、公爵閣下。私たちはこれまでお話したことはございませんし、ほとんど接点がございません」

「そうだな」

「それなのに、どうしてですか?」

「理由を説明する前に、一つ尋ねたい」

 私の言葉を遮ることなく、公爵閣下は静かに続けた。

「君は今後どうするつもりだ?」

「今後……ですか?」

「婚約を解消した後の人生だ。新たな婚約者を探すのか? それとも、しばらくは独身で過ごすつもりなのか?」

 私は答えることができずにしばらく考え込む。

 実のところ、そんなことは何も考えていなかった。

 ヴィクターとの婚約が解消された後のことなど、想像もしていなかったのだから。

 しかし、貴族の娘である以上、いずれ次の婚約のことも考えなければいけない。

 でも――

「……まだ、分かりません」

 正直にそう答えるしかなかった。
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