妹に婚約者を奪われたので、冷酷公爵様のもとで自由に生きます~と思ったら、なぜか溺愛されています~

2.自分のために

 その日の午後、ヴィクターが侯爵邸を訪れてきた。

 応接室に通された彼と向かい合って座る。

 両親と妹は同席していない。二人で話をしたいとヴィクターが望んだからだ。

 ヴィクターはいつもどおり、少し癖のある金色の髪を整え、仕立ての良い服装だ。見慣れた姿だった。

 定期的にお茶会をしたり、一緒に出かけたり、信頼関係を築けていたと思っていたのに……。

 それなのに、今日の彼はとても遠い人に見える。

「久しぶりだね、アリシア」

「先週、お会いしたばかりですわ」

 しかもエイミーと三人で。

「あ、ああ。そういえばそうだったね」

 ヴィクターは気まずそうに咳払いをしてごまかす。

 以前であれば、彼のフォローをしただろうが、今日はそんな気はない。

 だから、彼が話を切り出すのを黙って待っていた。

「ええと。今回のことだけど、本当に申し訳ないと思っている」

「そうですか」

「君にはこれまで随分と世話になった。アリシアが聡明で素敵な女性だということもよく知っている」

 そこでヴィクターは一旦言葉を切る。

「だが、僕はエイミーを愛してしまった」

 その言葉は思っていたよりも痛みを感じた。私は彼に「愛している」とは一度も言われたことがない。

「エイミーへの想いを秘めて君との結婚を考えた。けれど、君とは恋人というより、信頼できる仕事仲間としか思えなかったんだ」

 ……仕事仲間か。

 私は唇をきゅっと引き結んだ。
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