大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー
「小春さん」
不意に名を呼ばれ、顔を上げる。
「はい」
「またお会いできて、嬉しく思います」
少尉は、穏やかな眼差しで私を見つめていた。
その言葉に、なぜか胸が落ち着かなくなる。
初対面に近い相手なのだから、緊張しているだけだろう。
私はそう自分に言い聞かせた。
その後、父と兄を交えていくつか言葉を交わしたものの、少尉は終始、礼儀正しく、物静かな人だった。
私に対しても、必要以上に話しかけてくることはない。
それなのに、ふと顔を上げると、彼と目が合うことがあった。
そのたびに、少尉は静かに微笑む。
不思議な方だ。
そう思いながらも、私はその理由を尋ねることができなかった。