大正初恋浪漫譚ー突然、陸軍少尉の婚約者になりましたが、どうやら彼は私に恋をしていたようですー
翌日。
父と兄に呼ばれて客間へ入った私は、そこに座る青年を見て、思わず息を呑んだ。
すらりとした背丈。
整った顔立ちに、涼しげな目元。
身にまとっているのは、陸軍の軍服だった。
その姿には、凛とした気品がある。
けれど、決して近寄りがたいわけではなかった。
青年は私に気づくと、静かに立ち上がった。
「お久しぶりです。葛城千紘と申します」
落ち着いた声だった。
「小春です。本日は、ようこそお越しくださいました」
慌てて頭を下げる。
以前、父の関係で一度だけ顔を合わせたことがあるはずだけれど、言葉を交わした記憶はほとんどない。
だから、こうして改めて向き合うのは、初めてに等しかった。
それにしても。
この方が、葛城少尉……。
思っていた以上に、若く見える。
そして、驚くほど端正な顔立ちをしていらっしゃる。
私は失礼にならないよう、そっと視線を落とした。