こっちを、むいて。
「あのぉ、弥代くん」

「ん?」


運よく端の席が空いていて着席を勝ち取った平沢さんは、目の前で単語帳を凝視しているオレに申し訳なさそうに呟く。


「弥代くんって…というか、男の子って年の差何歳までなら許せちゃうの?」

「…え?」

「と、突然ごめん。変なこと聞いちゃって」


縋るようにこちらを見つめる平沢さん。

だから、オレは神様でも太陽でもないっての。

ってか、そんなことオレに聞いてくるってことは、

つまり。


「もしや、新入生にでも告られた?」

「えっ?!な、なんでわかるの?」


平沢さんがいつもの何倍も大きい声を出し、隣でうとうとしていたサラリーマンにきりっと睨まれてしまった。

テキトーに言ったのに当てたオレもオレで超能力か何かの類の才能あったわけ?

今日はほんとイレギュラー展開すぎるわ。


「あ、あの…実は」


平沢さんはおずおずと口を開き、オレに事細かに恋愛事情を説明してくれてしまった。

要約すると、新学期早々新入生に塾の前で告白され、返事は保留にしてあるとのこと。

オレは年上を好きになったことは生憎ないためどう回答するのがベストかは正直わからないが、

思ったことそのまま言えちゃうのがオレの良いところだといつか誰かが言ってたから、

今回もまたその通りにしますか。

ちらっと車内の掲示板を見ると最寄りまで2駅に迫ってきているから、ここはサクッと終わらせるしかない。


「好きって言われたら、オレは素直に嬉しいけど。あんなことあったばっかだし、ま、考えてもいいかっては思う。だけど、平沢さん自身が相手の気持ちに追い付いてないならしばらく待っててもらうしかないね。それで相手の懐の深さを図ると。まあ、そんな算段で」


とオレが口にすると、平沢さんは小さく拍手をした。


「弥代くんて恋愛カウンセラーみたい。すごい。なんか悩みしぼんだ気がする」

「そりゃどうも。あと、年の差なんて人それぞれ考え違うからなんとも言えないけど、社会に出たら2歳くらいは誤差ってよく聞くけどね」

「うん、わかった。参考にします」


ろくに恋愛なんてしたことがない男の話をうのみにするなと最後に釘を刺し、オレたちは電車を降り、それぞれの帰路に着いた。

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