こっちを、むいて。
「ふわぁ…」

「弥代くん、随分疲れてるみたいだけど大丈夫?初日きつかったでしょう?」

「いや、これくらいなんとも。ってかこんなんでへこたれてたら受験なんてできないし。サボってた分取り返さないとじゃん。心配してくれてるなら申し訳ないけどオレそんなやわじゃないから」


塾の帰り。

同じく川越に帰る平沢さんと電車のホームで待っていると欠伸が止まらなくなってずっと目には涙が充填していて最悪だった。

それもこれもどれも全部

昼間の彼女のせいなのだが。

笑いすぎて一時的に交感神経が優位になって眠気なんて吹っ飛んでしまい、昼休みが終わるまで彼女とぽつぽつ会話をしていたから寝てなかったんだよな。

彼女の弁当に入っていた卵焼きの味がどうとか、個性的な先生たちの扱い方とか、そんなどうでもいい話をしていたのだが、

あん時昼寝してれば今こんなフラフラ思考停止にならなくて済んだだろうな。

普段全くと言っていいほどクラスメイトとは会話しないのに、颯太もそうだけど年下とは相性が良いのか話せてしまうから俺自身も不思議だ。

なんて物思いにふけっていると平沢さんが慈しむようなまなざしをこちらに向けた。


「なんか、弥代くん生き生きして見える。…そのぉ、たぶん色々あったんだろうけど、新しい目標を見つけてそれに向かって一生懸命で、すごくキラキラして見える」


色々、ね。

それは平沢さんもだと思うけど。

ってか、またか。

眩しいって言われたり、キラキラして見えるって言われたり。

今日は珍しくそんなことばかり言われる。

オレ、そんな光属性の自覚ないんだけど。


「似たようなことたまたま知り合った後輩にも言われたんだけど、オレ何?太陽の化身だったりする?」

「ふふ。面白いこと言うんだね、弥代くんって。なんかもっとクールだと思ってた。たぶんきっと内側から湧き出てるんだよ。なんていうか…熱っぽいパワーみたいなのが。それが表に出てきたときにすごく眩しく見えるんだと思う」

「はぁ…。過大評価な気がするけど、ま、ありがたく受けっとく」


と、そんな話をしていると電車がやってきた。

川越と池袋。

本来ならばしなくてもいい往復運動に意味を持たせなければならない。

そのためにもオレはやるって決めたことはやらなきゃ。

そしてまた、

また、いつか

オレの音が戻ってきて

彼女に聴かせられるように。
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