恋のエンドロールでキスをして【小説版】

プロローグ


──私の初恋は映画みたいだった。

彼の全てが眩しくて、目が離せなくて、隣にいるだけで日々が輝いて幸せだった。


『綺麗だね』

『……そうだな』

手元の線香花火は夜空の星を堕としたように、煌めいて揺れて爆ぜていく。

夜空を彩る月と星が海面に映り、心地よい波音が寄せては返す様にして髪と耳をくすぐる。

はしゃいでいたの。
だって怜(れい)と初めての花火だったから。

まだ光を纏った線香花火が、小さくなって静かに砂浜に落ちて消える。

『あー落ちちゃった……』

『花……話がある』 

『え? 怜?』


見上げた彼の表情は、いつもより憂いを秘めていて途端に心が騒がしくなる。

『……俺たち、別れよう』

さっきまでふわふわと浮かれていた心から、色がすっとなくなるのがわかった。

『……ごめんな』

そう言って、彼はいつものように私の頬に手を伸ばす。

聞きたいことは沢山あるのに、何も言えなかった。聞けなかった。

──だって、私よりももっとあなたの顔が泣きそうだったから。


彼がすぐに消えてはなくならない私の恋心を確かめるかのように、優しくそっと唇を重ねる。

彼の柔らかい黒髪も、意志の強そうな切長の目も、叶えたい夢も、繋いだ手のぬくもりも、そして最後のキスは涙の味がしたことも。

忘れたくない。忘れられない。

だって──、私にとって、一生に一度の映画みたいな恋だったから。
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