恋のエンドロールでキスをして【小説版】
思わず名前を呼ばずにいられなかった私を、彼は冷たく見下ろしたままだ。
「どしたの〜?」
先ほどから、彼に腕を絡めている女の子が甘えたような声を出しながら、怜にこつんと頭を預ける。
淡いベージュの小花柄で胸元がやや露出高めのワンピースを着ているが、スタイルが良く彼女によく似合っている。おまけに怜と並んでも見劣りすることがない美人だ。
怜と親しげな彼女を見れば、心がズンと沈むのを感じた。
「ねぇ、怜の知り合い?」
「さあ。知らない」
怜はこちらに向けていた冷たい視線を彼女に戻すと、何も言わずに私の横をすり抜けていく。
(……え? 知らない……?)
残された私は呆然としつつ、顔だけ振り返って後ろ姿を見つめた。
(絶対……怜だった)
自慢じゃないが、私は童顔で中学からほとんど顔は変わっていない。いまは多少、化粧はしているが、薄化粧のため良くも悪くも素顔とさほど変わらない。
(それなのに……どうして)
「……知らないって何よ……」
誰が何と言おうが間違いなく怜だった。
そもそも私が怜を見間違えるはずなんてないのだ。
だって、五年前から私の心にはずっと怜がいたから。
どんなに消したくても忘れたくても、好きな気持ちだけはいなくならなかったから。
この時の私はまだ知らなかった。
──初恋という名の映画の幕が、再び上がろうとしていることに。