呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
『結衣? 聞いてる?』
優ちゃんの声にハッとする。いつの間にか思い出にふけっていたみたいだ。
「う、うん」
『こんなチャンスもう二度とないかもしれないんだよ? 食い意地じゃなくて恋意地見せなきゃ』
「そんなの無理よ。火傷に責任を感じてお世話してくれているだけなのに、それを逆手に取って迫るなんて失礼すぎてできないよ」
ベッドの上でクッションを抱えながら言う。
『なに弱気なことを言ってるのよ。一年前の二の舞になってもいいの?』
「それは……」
一年前のショックを思い出し、言葉に詰まる。
お花見の翌日、入社式で壇上に立った人を見て、思わず驚きの声を上げそうになった。着ているものこそスーツではなく黒紋付の羽織袴だが、西洋人に近い容姿を持つその人は、間違いなくお弁当の彼だった。
まさか副社長だったなんて――。
入社後しばらくしてから知ったのだが、彼が副社長に就任したのは、入社式直前だったそうだ。それまでは商品開発部長で、採用人事には完全にノータッチだった。つまり彼も、私が新入社員だとは知らなかったのだ。