その溺愛、予想外につき。
壁際にずらりと並んだ衣装ラックには、白や青を基調にしたステージ衣装が何着もかかっている。
ライトに反射して、金の刺繍や飾りがきらきら光っていた。

「わ……」

思わず声が漏れる。

「感動してる場合じゃない」

真白さんにぴしゃりと言われ、私は慌てて口を閉じた。

部屋には衣装担当らしい女性スタッフが二人いて、私を見るなり少し目を丸くした。

「この子が?」

「仮参加の子。急ぎで合わせたいの」

真白さんがそう説明すると、スタッフの一人が私の周りをくるりと一周見た。

「細いわねえ。涼くんより肩幅がない」

その言葉に、ひやりとする。
やっぱり、体格の違いは大きい。

「補正入れるしかないですね」

もう一人のスタッフが、メモを見ながら言った。
その視線は仕事そのものという感じで、変に気をつかわれないのが少し救いだった。

「じゃあまず、サイズ確認から。あっちでインナーに着替えてきて」

示された先には、簡易フィッティング用のカーテンスペース。
私はその前で固まる。

着替え。
そうだ。
当たり前だけど、ここがいちばん難しい。

「どうしたの?」

スタッフさんに不思議そうにされて、私は慌てて首を振った。

「い、いえ……」

頭の中が真っ白になる。
ここでどうしたらいいの。
男の子として着替えなきゃいけないのに、中身はどうしたって女の子だ。

困っていると、真白さんがすぐに察したらしかった。
小さく息をついて、スタッフさんたちに言う。

「この子の着替えは私が見るから、他は少し外して」

「了解です」

さっと人が下がっていく。
その対応の速さに、余計に自分が特別扱いされている気がしてしまう。

真白さんはカーテンのそばまで来ると、低い声で言った。
< 31 / 65 >

この作品をシェア

pagetop